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消えた日本文化

2026.05.19

落語のひとつ「時そば」。

ある男が屋台で勘定をする際に、一文銭を一枚一枚数えながら店主の手のひらに乗せていく。八つ数えたところで「今何時でい」と時刻を尋ねると、店主が「へい、九つでい」と応え、間髪入れずに「十、十一、十二…」と続けて数えて代金の一文をごまかした。

これを見ていたもうひとりの男が、翌日、別の屋台で自分も同じことを試みて「今何時でい」「へい、四つでい」「五、六…」と勘定を余計に取られてしまうという落とし噺である。

さて、この時刻の数え方に焦点をあてたい。昔の日本では「不定時法」が用いられており、一日を、日の出から日の入りまで、日の入りから日の出まで、それぞれ六等分していた。

真夜中を子の刻から始めて十二支を当てて呼んでいたが、一方で、子の刻と午の刻を九ツとして、一刻ごとに減算する呼び方も使用されていた。時そばの落語で出てくる「何時でい」というのはこれを聞いているのである。

不定時法ではつまり、季節や昼夜によって時の長さが違っていたことになる。現在は一日の長さを等分する「定時法」が世界中で使用されている。そのため時計の秒針も一定の速度で動くのであるが、時間の長さが一定ではない江戸時代にも「時計」は存在していた。西洋から渡来した定時法の機械式時計を不定時法に合わせて進化させたのである。

電気やガスが普及したいま、時間を問わず明るい室内で茶道が出来る。しかし昔の茶室の光源というと窓から入る自然光のみであった。当時の人々が太陽の浮き沈みと共に生活していたことを思うとより感慨深く感じられる。ぜひ茶道体験の折に意識していただきたい。

そして、茶道をはじめ様々な職業、文化が隆盛した江戸時代に進化を遂げた「和時計」について口述する機会があることを願って。

経理スタッフM